戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

2.交易品

陶器(大井郷七重) とうき おおいごうななえ

長門国阿武郡大井郷七重(山口県萩市大井の下七重・上七重の両地区)で生産されていた陶器。同地からは中世にさかのぼる半地下式の登窯が発見されている。古代、陶棺の生産を行っていた形跡もあり、古くから窯業が盛んな地域であったとみられる。

鳥銃 ちょうじゅう

ヨーロッパから伝来した火縄銃。中国明朝の時代、「鳥銃」や「鳥嘴銃」あるいは「鳥槍」と呼称された。鳥を狙撃し得るほどの命中精度を誇るためとも、その形状が鳥の嘴に似るためともいう。のち清朝の時代には、主に「鳥槍」と称された。

鉄丸銃筒(日本) てつがんじゅうとう

鉄製の弾丸を発射したとみられる銃筒。中国明朝の火器であったが、16世紀中頃に中国人の密貿易者によって日本にも伝えられた。日本人による製造も行われ、朝鮮王朝でも導入が図られた。

仏郎機砲 ふらんきほう

子砲を砲身の後部に装着して発射する後装式の大砲。砲身は鋳銅製または鋳鉄製。ヨーロッパで開発された火砲で、アジア海域に進出したポルトガル人らによって伝えられ、東アジアにおいて急速に普及した。

火槍(日本) かそう

中国発祥の火器。火薬を詰めた筒を槍の尖端に付け、点火することで火炎を噴出する。応仁の乱の際、東軍の細川勝元らの陣営に配備された。琉球王国から現物または製造技術が移入されたと推定される。

火砲(対馬) かほう

対馬の前期倭寇が用いた火砲。鋳鉄製。中国明朝から日本に移入されたものとみられる。

漆器(備後) しっき

備後国で生産された漆器。広島県福山市草戸町の草戸千軒町遺跡からは、多くの漆器とともに、へら等の漆塗りの道具も出土している。

コーヒーカップ(肥前) Coffee cup

17世紀後半、肥前磁器(伊万里焼)のコーヒーカップが海外に輸出された。オランダは、本格的な輸出開始の初期からイエメンやペルシア、インドへとコーヒーカップとみられる小碗を運んでいる。一部はそこからオスマン帝国領内に流通していったとみられる。

伊万里焼 いまりやき

肥前有田を中心とした地域で生産された磁器。近隣の伊万里港から積出された為、消費地では「伊万里」と呼ばれた。明清交代の戦乱で中国磁器の輸出が激減すると、代わって世界市場を席巻した。

ビヤマグ(肥前) Beer mug

ビヤマグとは、ビールを飲むために作られた、円筒形で把手のついた器を指す。17世紀以前のヨーロッパでは、ビールを飲む際に陶器や金属器のビヤマグが使われていた。17世紀後半、肥前磁器によるビヤマグが日本からヨーロッパに輸出された。

チョコレートカップ(肥前) chocolate cup

17世紀後半、肥前ではオランダからの注文を受けて多くの磁器が生産され、海外に輸出された。その中にはチョコレートを飲むためのカップ、すなわちチョコレートカップがあった。

鯨(長門) くじら

長門国の日本海沿岸には鯨の漂着が時々あり、寄鯨と呼ばれた。中世には、食用だけでなく鯨油も使用された。貴重な資源であり、権利をめぐって地域間の争論も発生した。

鯔(周防) ぼら

ボラ目・ボラ科に分類される魚の一種。中世、周防の特産品であり、船で畿内にも運ばれた。

石見榑 いわみくれ

中世、石見の材木は「石見榑」とも呼ばれ、遠隔地にも流通していた。高津川および匹見川上流域といった益田の後背地には、これを可能にする豊富な森林資源があったことが推定されている。

樟脳(中国) しょうのう

中国で生産された樟脳。樟(クスノキ)を加工して作られた。東南アジアで産する竜脳の代用品であり、殺虫剤や火傷の際の鎮痛剤として用いられた(『本草品梨精要』)。中国では12世紀には製造が始まっていたとみられる。

樟脳(日本) しょうのう

日本で生産された樟脳。樟(クスノキ)を加工して作られた。安価な竜脳と位置付けられ、殺虫剤や火傷の際の鎮痛剤として用いられたとみられる(『本草品梨精要』)。特産地は九州地方、特に薩摩国。17世紀以降、オランダによって海外に輸出された。

宮原銀 みやはるぎん

戦国期、肥後国宮原で発見された鉱石。発見当初は、銀鉱石と鑑定されたが、以後の史料には見えなくなる。

慈光茶 じこうちゃ

武蔵国の都幾山慈光寺(埼玉県ときがわ町)で生産された銘茶。当時、武蔵国を代表する銘茶として現地では知られたが、京都では「河越茶」として認識されていた。現在の埼玉県・東京都で生産される「狭山茶」の起源の一つとされる。

薩摩焼 さつまやき

薩摩国で焼かれた陶磁器。朝鮮に出兵(慶長の役)した島津軍によって捕らえられた朝鮮陶工によって製作された。江戸期は「国焼」あるいは「国許焼」「薩州焼」とも記されている。

ワイン(チェコ) わいん

東ヨーロッパのチェコで生産されたワイン。特に南部のモラヴィア地方で生産が盛んだった。現在でも、南モラヴィアは優良なワイン生産地であり、ミロクフやヴァルチツェ、ズイノモといった街は、ワインを主要産業としている。

ビール(チェコ) びーる

東ヨーロッパのチェコで醸造されたビール。中世のチェコでは、ビールは都市で醸造され、庶民の飲み物として広く普及していた。現代の日本でも広く飲まれているビールの種類「ピルスナー」は、19世紀のチェコで生み出されることになる。

鉄(備後) てつ

中国山地に接する備後北部地域で産出された鉄素材。中世、備後の特産品として広く知られた。一部は沿岸の港から、畿内方面へも輸出された。

白檀 びゃくだん

東南アジアのティモール諸島に生えるサンタル樹の一種。心材に芳香がある。檀香の代表的な香木であるが、厳密には樹心と根部の黄褐色に近いものが黄檀、材の白色のものが白檀と呼ばれる。香木として用いられたほか、仏像の材料としても使われた。

佐渡海苔 さどのり

佐渡国において採取・加工された甘海苔。中世には佐渡を代表する物産として珍重された。

青苧(越後) あおそ

芋(からむし)から繊維を取り出し、乾燥させて束とした中間製品。本項で取り上げるのは越後国の魚沼郡・頚城郡を中心とした地域で生産されたもの。この越後産青苧からの紡糸により、越後布などの芋麻布が織られた。

能登釜 のとがま

能登国七尾北湾の要港・中居で生産された鉄釜。

輪島索麺 わじまそうめん

戦国期、輪島で生産された一種のお菓子。京都にも「輪島索麺」の名で知られた。索麺は、小麦粉を塩水でこね、油で細く引き伸ばして線状にし、日光に乾燥させて作るもので、中世、禅僧の点心(おやつ)用や酒の肴として嗜好された。

大砲(スウェーデン) たいほう

ヨーロッパ北部の大国、スウェーデンで製造された大砲。17世紀以降、隆盛をきわめ、オランダをはじめとする各国に輸出された。

大砲(ポルトガル) たいほう

15世紀後半、ポルトガルは海外進出と貿易の拡大にともない、大砲への国内需要が増加した。同国は、一大「大砲市場」となっていった。

トウガラシ(中南米) とうがらし

トウガラシは紀元前8000年〜7500年にはペルーで栽培が始まっていたといわれる。中南米各地で古くから利用された野菜の一つ。