戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

2.交易品-03.中国・四国地方

備前焼 びぜんやき

備前国の香登荘、伊部周辺で生産された無釉の陶器。壺、擂鉢、大甕の三器種を中心に生産され、西日本を中心に貯蔵用や調理用の生活雑器として広く使用された。16世紀ごろから茶陶としても用いられるようになった。

備中紙 びっちゅうがみ

備中国で生産された紙。備中国は平安期以前から紙の産地だったが、15世紀中頃から特に檀紙類の産地として知られるようになる。備中国内では新見荘など北部地域で生産が盛んであった。

紙(新見荘) かみ

備中国北部の荘園である新見荘で生産された紙。備中国は『看聞日記』永享十三年(1441)正月十九日条に「備中檀帋」がみえるなど、高級檀紙の産地として京都でも知られていた。

備中鉄 びっちゅうてつ

備中国で産出した鉄。中世、同国の鉄は全国的な名産品であった。室町期、摂津国の商人が新見荘で「くろかね(鉄)」を質物としており、畿内の商人が鉄の買付に訪れていたことが知られる。

西条柿 さいじょうがき

安芸国賀茂郡が発祥とみられる渋柿。広島県東広島市西条町寺家の長福寺に原木があったと考えられている。戦国期に安芸国だけでなく石見国や出雲国、伯耆国ほかに伝播。江戸期には「西条柿」として全国に知られた。

山口酒 やまぐちさけ

周防国山口で造られたとみられる酒。天文八年度と天文十六年度の遣明使節の記録にみえる。両方とも山口を本拠とする大内氏が経営主体となっており、赤間関等で遣明船に積み込まれたとみられる。

道後酒 どうごさけ

伊予国道後で造られたとみられる酒。伊予酒とも。慶長十六年(1611)頃から日記類にみえるようになる。17世紀中頃には伊予を代表する産物として全国に知られた。

三原酒 みはらざけ

備後国の港町三原で造られた酒。17世紀初頭からその名が見える。三原では福島正則入部後に酒造業が発達したとみられ、その後全国屈指のブランドとなった。

尾道酒 おのみちざけ

備後国の尾道およびその周辺で生産された酒。室町期以前から酒造業が盛んであったとみられ、『庭訓往来』には名産として「備後酒」がみえる。16世紀末には全国的にも知られる酒となっており、貴人の贈答品としても用いられた。

材木(周防国玖珂郡) ざいもく

周防国最東部の玖珂郡の小瀬川や錦川流域で生産された材木。少なくとも鎌倉期から河川水運を用いて瀬戸内海に搬出されていた。安芸国の厳島神社造営などに用いられていることが確認できる。

鮎(岩国) あゆ

周防国東部の錦川流域で獲れた鮎。下流域の岩国では、16世紀後半に鮎料理が旅人に提供されていることがみえる。鮎料理自体は古くは『延喜式』にも記載があり、古くから日本で食べられている。

鉛(久喜銀山) なまり

石見国邑智郡南端の久喜銀山において産出された鉛。同銀山では永禄三年(1560)の銀鉱脈発見以来、銀を含んだ鉛鉱石が採掘され、精錬によって鉛と銀に分離された。このうち鉛は石見銀山へと運ばれ、銀鉱石の精錬に使用された可能性が指摘されている。

陶器(大井郷七重) とうき おおいごうななえ

長門国阿武郡大井郷七重(山口県萩市大井の下七重・上七重の両地区)で生産されていた陶器。同地からは中世にさかのぼる半地下式の登窯が発見されている。古代、陶棺の生産を行っていた形跡もあり、古くから窯業が盛んな地域であったとみられる。

漆器(備後) しっき

備後国で生産された漆器。広島県福山市草戸町の草戸千軒町遺跡からは、多くの漆器とともに、へら等の漆塗りの道具も出土している。

鯨(長門) くじら

長門国の日本海沿岸には鯨の漂着が時々あり、寄鯨と呼ばれた。中世には、食用だけでなく鯨油も使用された。貴重な資源であり、権利をめぐって地域間の争論も発生した。

鯔(周防) ぼら

ボラ目・ボラ科に分類される魚の一種。中世、周防の特産品であり、船で畿内にも運ばれた。

石見榑 いわみくれ

中世、石見の材木は「石見榑」とも呼ばれ、遠隔地にも流通していた。高津川および匹見川上流域といった益田の後背地には、これを可能にする豊富な森林資源があったことが推定されている。

鉄(備後) てつ

中国山地に接する備後北部地域で産出された鉄素材。中世、備後の特産品として広く知られた。一部は沿岸の港から、畿内方面へも輸出された。

藍(阿波) あい

中世日本の代表的な染料。阿波国での生産は、鎌倉期にさかのぼる。

太布(土佐) たふ

和紙の原料でもある楮(こうぞ)の皮を加工した繊維で織られた布。土佐では木綿以前の庶民衣料として麻布、紙子とともに普及していた。戦国期、堺商人や伊勢御師の活動により、かなりの量の太布が畿内方面に移出されていた。

赤銅(備後) しゃくどう

備後国の鉱山において採掘された銅の合金。赤銅の比率は銅に対して金3~4%、銀1%で構成される。緑青・硫酸銅・ミョウバンなどを混合した液で煮ると黒みを帯びた紫色になり、古くから仏像・装飾品などの金属工芸にも用いられた。

備後表 びんごおもて

備後国で生産された畳表。同国沼隈地方で栽培されていた藺草を原料として作られたとみられる。室町期には「備後表」としてのブランドが知られており、織田信長が築城した安土城でも使用されたことが記録にみえる。

備後砂 びんごずな

備後国帝釈峡・夏森で産出された白色粒状の石灰石。石灰石が黒雲母花崗岩の貫入を受け、その接触部が熱のため変質して糖晶質になった結晶質石灰岩であり、特に備後砂は日本で採掘されるもののうちでも炭酸カルシウム純度が極めて高く、良質であるとされる。

平野石 ひらのいし

山口県周南市四つ熊ヶ岳周辺より産出する安山岩。中世から近世初頭にかけて山口県内でもっとも広く分布し、また最も多く利用された石材。正式名称は黒雲母角閃石安山岩。色調は灰白色を呈し、風化で灰褐色となる。石質は軟質で非常に加工に適しており、古く…

山口革 やまぐちがわ

周防国山口で生産された革製品。江戸期、特に山口革製のたばこ入れは、萩焼(松本焼)や赤間硯とならぶ萩藩の人気商品だった。

土佐弓 とさゆみ

木材の産地として知られる土佐国において、弓はその副業的手工業製品として製作されたとみられる。戦国期には「土佐弓」とも呼ばれ、有力者間の贈り物にも用いられた。 乃美宗勝と「土佐弓」 土佐一条氏 堺商人による購入 参考文献 乃美宗勝と「土佐弓」 南…

赤間硯 あかますずり

長門国赤間関で作られた硯。長門国の名品として全国的に知られており、寛永二十一年(1645)刊行の俳諧論書『毛吹草』には長州名物として船木櫛、萩焼と並んで掲載がある。原石は赤間関周辺で採掘されていたが、江戸期になると厚狭郡の稲倉山や同郡内山…