戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

羅国香 らこくこう

 シャム王国(タイ)のロッブリー地方*1産の沈香。「羅国」とは、中国の文献にみえる「羅斛」(Lo-fu,ロッブリー地方)の宛字とみられる。

「六国」の一つ

 江戸期の香道において、「伽羅」「真南蛮」「真那賀」「蘇門答刺」「佐曾羅」とともに「六国」の一つに数えられた。 天正二年(1574)の「建部隆勝筆記」には、「名香木所之様体、御尋候、伽羅、新伽羅、羅国、真那班、真那賀、大形如斯候」とある。戦国期には沈香が木所で種類分けされ、その一つに「羅国」があったことが分かる。

中国の文献

 14世紀半ば、中国・元朝の汪大淵が著した『島夷志略』には、「羅斛」(ロッブリー地方)について「此地産羅斛香、味極清遠、亞於沈香」と記している。15世紀前半においても、費信の著した『星槎勝覧』に暹羅(シャム)国の産物として「羅斛香」がみえる。同じく馬歓の『瀛涯勝覧』には、「羅褐速香」が挙げられている。

 中国においてはシャム王国ロッブリー地方の羅斛香は、よく知られた香木であった。日本にもこの羅斛香が移入され、宛字として「羅国」と呼ばれたものとみられる。

羅国の名品と評価

 天正十五年(1587)頃に茶人・山上宗二が著した『山上宗二記』には、当時の名香が「十注の香ならびに追加の六種」として挙げられている。

 この中で木所が羅国とされているものに、「古木」「八橋」「菖蒲」がある。特に「菖蒲」については「木所羅国なり。一段面白き香。羅国の名香数多しといえども、この香頂上なり。」としている。羅国は伽羅とともに、品質の高い沈香として、高く評価されていたことがうかがえる。

参考文献