戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

塩(塩竃) しお

  陸奥国一宮・塩竃社の門前町塩竃とその周辺の湾岸では、製塩が盛んだった。戦国期、留守氏重臣塩竃社が製塩業の支配に関わっていた。

塩と神事

 塩竃社の末社には、製塩用の釜を御神体とする御竃社がある。また御竃社の御竃水替神事・藻塩焼神事は、現在でも塩竃社全体の神事として行われている。塩が神事と結びつく、ある種の神聖性を有していたことがうかがえる。

塩竃の製塩

 南北朝期の旅行記『都のつと』では、塩竃社自身が塩釜を御神体としていたように記されている。また港町・塩竃の多くの「あまの家」が、煙を立ち昇らせている情景を描写し、「塩やくならんとみゆ」としている。当時既に、塩竃で製塩が盛んに行われていたことを伝えている。

留守氏重臣・佐藤氏の関わり

  戦国期、天文年間の『留守分限帳』によると、留守氏の重臣塩竃を本拠としていた佐藤玄蕃頭は、塩竃の中の藤倉という場所に釜一口と山を所有していた。この釜は塩水を煎熬するための鉄釜、山は塩木(塩焼きの際の燃料)を伐採するための山であると推定される。中世には干潟であった藤倉に、揚浜式塩田が営まれ、鉄釜が据えられていた。佐藤氏は製塩に必須の鉄釜を所有することで、製塩業全体も掌握していたとみられる。

塩竃周辺の釜

 また『留守分限帳』では、他にも塩竃周辺の吉津、越之浦に新太夫、小野主殿助がそれぞれ釜を有していることがみえる。二人はともに塩竃社の神職筆頭・小野氏の一族とみられ、塩竃社と製塩の実質的な結びつきを知ることができる。

参考文献

  • 大石直正 「十三湊の安藤氏館と塩釜津」(『中世都市十三湊と安藤氏』) 国立歴史民族博物館 1994