戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

唐本『仙仏奇踪』(角倉素庵所持) せんぶつきそう

 『仙仏奇踪』は、中国明朝の儒学者・洪応明が万暦三十年(1602)に編纂した唐本。四編からなる。一つは仙人六十三人の伝記とその図像からなる「消搖墟」。一つは仏祖六十一人の伝記とその図像を載せる「寂光境」。一つは道教経典や道士の語録などからの抜粋を収めた「長生詮」。一つは仏祖の法語を抜き書きした「無生訣」。

豪商・角倉素庵と「六原ノ絵かき」

 京都の豪商・角倉素庵は、中国で出版されて間もない『仙仏奇踪』を入手していたとみられる。藤本宗舟宛の書状の中で、仙人や仏祖の絵が描かれ、それぞれ「長生詮」、「無生訣」と外題が書かれた唐本二冊について説明している。

 素庵は道不という人物から、本を入手したとしている。本は吉田道益に貸与し、その前後で「六原ノ絵かき」に貸し与えた。そして(現在は「六原ノ絵かき」の所にあるので)閲覧するならそこを尋ねて欲しい旨を伝えている。なお書状の宛名には、素庵の子の平次の名も記されている。平次に「六原ノ絵かき」への案内をさせたとみられる。

絵師・俵屋宗達

 六原は、京都の鴨川の東、清水寺への参詣道(清水坂)の南側辺りの地名だったらしい。素庵が『仙仏奇踪』を貸した「六原ノ絵かき」とは、絵師・俵屋宗達であったともいわれる。宗達が営んだ絵屋「俵屋」は、寛永十年代に『仙仏奇踪』を絵手本とした道釈人物画を多く描いている。

参考文献