広島県三原市小坂町の善根寺収蔵庫*1に安置されている天部形の立像。三原市重要文化財。制作年代は平安時代前期と推定されている。
歩き出す姿勢の天部形像
本像の像高は98.3cm。天部形の立像であるが、服装の詳細はあまりはっきりせず、どのような尊格として作られたかは不明である。
内刳りがなく、両腕から台座まで含んで全て一材で彫出された古様な構造。制作年代は善根寺収蔵庫に伝わる主要尊像(薬師如来坐像や日光・月光菩薩立像、帝釈天立像、四天王立像など)と同じ平安時代前期と推定されている。
本尊について何より特徴的な表現は、右膝を上げ、かかとを浮かせて、今にも歩き出すかのような体勢をとっている点とされる。
こうした姿勢をとる仏像として著名な例に、平安時代前期の檀像様彫刻のひとつ、三重・津市瀬古区の十一面観音菩薩立像がある。この像の足を踏み出す動きのある表現は、悔過儀礼などにおいて、観音が現世に降臨する霊験を示したものと解釈されている。
ただし本像のような天部形像でこうした表現がとられるのは大変珍しいという。かかとを浮かせる形で、ある尊格を来臨するさまを表現することが、観音像だけではなく天部形像にも敷衍されていたことがうかがえる。
関連事項
参考文献
- 濱田恒志 「広島・善根寺収蔵庫の諸像について」(『美術史学』第35号 2017)
- 三原市教育委員会文化課 編 『三原の仏像 瀬戸内の十字路 三原の仏像展図録』 三原市教育委員会 2014


国立歴史民俗博物館 総合資料学情報基盤システムKHIRINより
https://khirin.rekihaku.ac.jp/pid/nmjh_rekimin_h/13449011.html
*1:28軀にもおよぶ大小さまざまな仏像が安置されている。うち25軀は広島県ないし三原市の重要文化財に指定され、それらは概ね平安時代の作と考えられている。