戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

シュールストレミング surströmming

 鰊(ニシン)の発酵食品。生の鰊を塩水につけた状態で発酵させて作られる。スウェーデン語で「酸っぱい鰊」を意味する。

鰊の発酵食品

 シュールストレミングは、遅くとも16世紀には作られていたといわれる。その製法は、鰊の内蔵と頭を取り、24時間ほど濃い塩水に漬けたのち、今度は薄い塩水に漬けて1ヶ月ほどおく。密閉した樽に貯蔵され、空気のない状態におかれた鰊は発酵(あるいは腐敗)を始めるため、凄まじい臭気を発する。

 中世ヨーロッパでは、鰊は塩漬けで保存されることが多かったが、スウェーデンでは輸入品である塩は高価なものだった。このため塩水に漬けて鰊を保存することは、食塩使用量を節約できる利点があった。

塩水漬け

 鰊を塩水に漬けて保存する方法は、古くから行われていた。11〜12世紀のフランスやイングランドの文書には、漁師たちが鰊の内臓を取り、それを塩分の濃い海水に漬けて保存したことが書かれている。

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 14世紀、オランダ人漁師ウィレム・ブーケルスも鰊の内臓を抜いてから保存する、ハーリングカーケンという革新的な技術を編み出したことで知られる。これは、獲ったばかりの新鮮な鰊を、海上で開いてエラと内臓を取り除き、塩をふりながら木樽に詰めていき、最後に高濃度の塩水で樽を満たして蓋を閉める、というもの。

 これにより、鰊の保存加工を船上で行えるようになり、調理前の塩抜きも、長時間水に浸して湯で煮立てたりする必要がなくなった。併せて、鰊を傷ませずに保存できるようになった。

 シュールストレミングは、このような北海沿岸地域の塩水漬けの技術をもとにした食品であったと推定される。

参考文献

  • キャシー・ハント(訳 龍和子) 『「食」の図書館 ニシンの歴史』 原書房 2018
  • 吉田宗弘 「いい塩梅」 (『食生活研究』41 2021)

シュールストレミング from 写真AC