竹原小早川家臣。天文年間に警固衆の一員として活躍した。
大崎島での合戦
天文七年（１５３８）、竹原小早川氏の軍勢が大崎島の大久師（広島県大崎上島町大串）で、沼田小早川勢*1と合戦におよんだ。新太郎は竹原小早川方として参戦して負傷し、小早川興景から戦功を賞されている（「小早川文書」）。
新太郎の出自
新太郎は、その姓から呉衆（現在の呉市に割拠した土豪）を構成した檜垣氏の出身とみられる。呉衆は元々は大内氏直属の警固衆だった。
しかし、大永四年（１５２４）六月には安芸佐西郡に展開する乃美賢勝への増援として「桧垣大四郎・神兵衛両人」らが小早川弘平（興景の父）に乗船しての出陣を命じられている。檜垣氏ら呉衆が、竹原小早川氏の指揮下に入っていることが分かる。新太郎は両者の関係性の変化を背景に、竹原小早川氏に出仕することになったのかもしれない。
能美島での合戦
天文二十三年（１５５４）五月、毛利氏が大内氏（陶氏）と断交。毛利元就の三男隆景を当主とする小早川氏も同調した。安芸国では新太郎の出身である檜垣氏を含む呉衆や多賀谷氏、能美氏ら海上勢力が大内方に留まった。小早川家に属す新太郎は、一族と敵対することになった。
同年九月十九日、小早川隆景は桧垣槌法師（新太郎の子）に感状を与え、新太郎が能美浦（広島県江田島市）での合戦の際に「無比類」の活躍をしたことを伝えている（『藝備郡中士筋者書出』）。
ただ、感状には「聊不忘却候 忠義之段到子孫可成其感候」とあり、宛先も子の槌法師であることから、新太郎はこの合戦で討死したと推定される。なお槌法師は父の死後、小早川家臣・林甲斐守の養子となって家督を継ぎ、林次郎左衛門を名乗った。
参考文献
- 能島正美 『安芸津町史 通史編 第３章 古代・中世の安芸津のあゆみ』 ２０１１ 広島県東広島市
- 下向井龍彦 「第三章 中世の呉」 （呉市史編纂委員会・編 『呉市制１００周年記念版 呉の歴史』 ２００２）
- 広島県 編 『広島県史 古代中世資料編Ⅴ』 １９８１
*1:当時、沼田小早川氏は出雲の尼子氏と通じており、大内方である竹原小早川氏とは敵対関係にあった。
