戦国日本の津々浦々 ライト版

港町から廻る戦国時代。そこに生きた人々、取引された商品も紹介します。

由良 ゆら

 淡路島東南部、瀬戸内海と太平洋を結ぶ廻廊である紀淡海峡に面した港町。紀伊半島と最短距離で向かい合う位置にある。南北2kmにもわたる砂州によって守られた天然の良港。中世、畿内と四国をつなぐ中継港として栄えた。

海運の拠点

 文安二年(1445)における兵庫北関の関税台帳『兵庫北関入舩納帳』は、室町期の由良の海運の状況をよく示している。

 由良船の兵庫北関への入港回数は116回にのぼる。『納帳』全体でも兵庫(地下)、牛窓についで第3位を占めている。由良における海運が、かなり発達していたことがわかる。

阿波、土佐と畿内を結ぶ廻船

 由良船は阿波、土佐の産品の輸送に特化し、両国に産品輸出に大きく関わっていた。由良船の積載品は、95%以上を榑(くれ)が占める。榑は板の形に加工された建築用材木で、阿波国土佐国の産と推定される。平嶋甲浦などの両国の港の廻船も、同様に材木や榑に特化した輸送を行っている。

 また由良船は、三原塩、阿波塩、も運んでいる。三原塩は地元の淡路産だが、阿波塩や藍は阿波国産とみられる。

参考文献

  • 神木哲男 「中世の瀬戸内海と兵庫津」(神木哲男・崎山昌廣・編著 『歴史海道のターミナル 兵庫の津の物語』) 1996